New Zealand紀行
「光を観に行く」
初出 田崎清忠催
Writers Studios
2018年 4-5月

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Traveling in
New Zealand

New Zealand紀行

「光を観に行く」

1 海外旅行に行く理由 (1) (2)
2 降っても照っても (1) (2)
3 氷河と銀嶺 (1) (2)
4 カーヴする鉄路 (1) (2)
5 よみがえる街角 (1) (2)
6 海へゆくもの (1) (2)

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5 よみがえる街角

K. Kitada

(2)

この日のもう一つの計画は夕方、Christchurch郊外のWillowbank Wildlife Reserveへ行くことだった。約束の時間ピッタリにホテルの駐車場に迎えの乗用車が止まり、声も身振りも大きなNZ女性が顔を出した。ヨーロッパ系の面立ちでないことは明らかだったが、アジア系でもない。Maori系かもしれない。いちいち出身を詮索することは不要だと思うようになっていたので聞きもしなかった。そんなことより、車を発進したとたん始まった彼女との会話は楽しかった。互いの質問に気さくに答えるついでに「そう言えば」と、どこまでも話題が広がっていく。特に傑作だったのは「NZ人の生活に性差は関係ない」という彼女の主張で、家事も育児も男女共にやるのは当たり前。女だって肉体労働に向いているならトラックの運転だろうが建築だろうが何でもやる。稼ぎのよい方が外へ出て、片方が家のことをやるのに男女の区別は必要あるまい。自分はそのように暮らしてきた。首相だって今は女でしょう。彼女はきっとうまくやる。こういう旅行者の送迎も好き。特に早朝・深夜に飛行場に迎えに行くのは大好き。広い道路は私のもの?と話は止まるところを知らない。(げにwomen’s talkは世界共通、を実感した。)

到着した「Willowbank 野生動物公園」最大の目玉はkiwiの保護・飼育場である。QueenstownでもKiwi & Birdlife Parkを見学したが、こちらはさらにkiwiの個体数も多く、専門のガイドがグループを引率して園内を回り、夜行性のkiwiのいる真っ暗な建物の中では赤外線懐中電灯を使ってその動きを追いながら、ゆっくりと観察させてくれる。彼女のレクチャーも大音声で、即席のグループを集中させる手腕はぜひ学びたいものだった。

公園内にはMaori族のパフォーマンス専用の区画がある。Kiwiを見学したグループはそのままMaori族の女性に引き継がれ、登場したMaori族の「戦士」たちと対面することになる。このパフォーマンスは歓迎の儀式、数種類の伝統的風習の紹介、歌とダンスの披露の三部に分かれている。全て一部族と他人種との出会いのロールプレーという形をとった、「参加型のアクティビティー」だった。したがって、Maori語での挨拶や応答の練習に始まり、踊りにも巻き込まれる。多国籍の男性陣は全員舞台に上がってハカダンスを習った。

最後は公園内のレストランでMaori族のハンギ料理のディナーとなる。先ほどまでの戦士たち、歌い踊る女性たちは給仕に回り、地中で蒸して作った肉や野菜がふんだんにふるまわれた。パフォーマンスからディナーまでの全体が“Maori Night”というツアーメニューで、エージェントを通じて集められた各国の観光客が参加していた。舞台から“Where are you from? ”と問いかけられて、“Canada!” “Australia!” “Great Britain!” “Singapore!” などの声が上がる中で負けずに、“Japan! ”と叫ぶのは愉快だった。

Maori族のパフォーマンスはQueenstownでも行われていた。民族の伝統を観光客にショーとして見せることに抵抗はないのだろうか。それもまた観光資源の一つとして尊重されるならむしろ保存の手段と考えられるのだろうか。出演者たちには一般のNZ人としての日常もあるのだろうか。NZのラグビーチームAll Blacksが国際試合でhakaダンスを披露するのは、イギリス連邦(the Commonwealth)の中での独自性の誇示なのか。湧き上がる疑問の数々を、今後の継続的なNZへの関心を通じて解いていきたいと思う。

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