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徒歩記 2 

本郷の四季」

--Hongo Wonderland--

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「地下1700mから温泉を掘り当てた」という話を聞いた時、 どんなものが出来るのだろうと固唾を飲んだが、「ゆ」と暖簾の掛かる湯治場 になるはずもなく、美容と健康志向の大エステティックサロンが出現した。 LaQuaの敷地に一歩踏み込めば、大道芸人が観客を集める広場はいつもカーニバル状態。 フィンランド風「ムーミンレストラン」を始め、ホラーな見せ物小屋、ラーメン屋、 カフェテラスなどが広場を取り巻き、しゃれたブティックを揃える二階デッキにスパ(温泉) への入り口がある。

背後からそんな喧噪を睥睨しているのがドームホテルに対峙する高層ビル、「文京シビックセンター」 である。高速エレベーターに乗って25階の無料展望台に昇ると、周囲360度の大パノラマが開ける。 東西南北に視界を遮るものはなく、天候がよければ東京湾岸から都心、首都圏一帯と近郊はおろか、 遙かに富士山、丹沢・秩父連峰、筑波山、その先の山々までも見晴らせる。延々と続く密集都市の景観に、 これが東京かと暫し呆然としてしまう。

展望台のガラスを通すと緑はどこかくすんで見える。コンクリートに 囲まれた緑地の何と小さいことか。この都市はどうやって呼吸しているのだろうと目眩を覚える。 それでもシビックセンターの足元には、地下鉄後楽園駅前の礫川公園、一筋隔てて小石川後楽園、 ぽっかり浮かぶ島のような小石川植物園、微かに東京大学構内の三四郎池あたりの茂みなどが認められる。 私は時々この巨大都市のパノラマを見に来るが、その後は必ず地上の緑が恋しくなる。

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