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From Yuko to Keiko 8/31/1999 「ヨコハマの夜」 (Yokoama)
From Keiko to Yuko 8/31/1999 「Re:ヨコハマの夜」 (Tokyo)

From Yuko to Keiko 8/31/1999 「ヨコハマの夜」 (Yokohama)

Dear Keiko

メールありがとう。 おっと、そろそろ飲みにでかけますかなんて思いながら 虫の知らせのメール受信でした。 だから、出かけるのはちょっとおあずけにして、お返事。

帰国後一番暑い日だったような気がする、今日は。最後の休日。 用事はたくさんあったけど、どれもこれも理由を見つけては 出かけるのをやめた。 心残りだったのは夜、赤坂のNというお店にHさんとMさんという歌手の コンビを聴きに出かけようと考えてたのに、これも断念したこと。 オックスフォードで涼しい(寒い)夏をすごしたので、暑さには 堪え性がない。 たった今も飲み友達から催促の電話が鳴りました。 でも、でも、これを書くまでは。

この秋の音楽活動のことでしたね。 まず、9月は来週、さ来週の「茅ヶ崎アフタヌーンコンサート」から。 これは時々曲を書いてもらったりしてお付き合いのある、Tさんの属している ジャズバンド主催のコンサート。フランス特集をやるというので、招かれました。

次は、お待ちかね。久しぶりにHさんのピアノで歌える。横浜のある美容院の 店主が催しているサロンコンサートの出演。こういうの大好きです。全面的に 商業的ではないものに好意を感じる。今時「花より団子」ばかり目に付くので。

でも私の周りには素晴らしい企画を豊富に持っていて、次々実践して行く人たちが たくさんいる。Keiko、あなたもその一人です。 逗子のTさんからもご自宅の月1回のサロンコンサートに出演を頼まれている。 これは、11月。

横須賀の見晴らしのいい山の上で馬屋を持ちトレッキングステーションを経営して いらっしゃるMさん。野外の即興コンサートを何度かやりましたが、今度、馬場を 望む傾斜面にステージを組み立てる計画だそうです。もちろん常設の。 グランドピアノを置くということ。困難はあるだろうけど、いろいろな方面に意見も 求めつつ、来春のオープンを目指しています。

こんな人に出会うと血が騒ぐ。熱くなる! みんな、いい年の大人達です。大人が仕事以外に夢中になっているところを 見るのが好きです。

10月21日には関内近くのラパロクラブというお店に初出演です。 11月21日には例の桜木町のドルフィーでコンサートをやります。日曜の昼です。 どちらもピアノはHさん。

そんな所が一人で受け持つステージですが、このほかに、新宿のあるお店に 出るかもしれない。ここもHさんが弾いているので。決まれば三人の歌手の一人とし て です。あなたが新宿が都合がよければ、1回くらいは実現するといいね。

私はいわゆるライブ歌手として、シャンソニエ、ライブハウス出演 を自分の音楽活動の中心にしていくつもりはあまりないので、 数は多くないけど、マイペースでやってくつもり。

あと、秋にはCD作りもある。これは本当言うとマネージャーに押されてという感じ なのですが、確かに歌い続けるためには戦略も必要なのかもしれない。 これには間に合わないかもしれないけど、いつか、あなたの詩を歌ってCD作れると いいね。夢は必ず果たす!

自分の詩もボチボチ歌っていくつもり。今は一つだけですが、今度聴いてね。 訳詞もやりたいし、ファドも歌いたいし、気が多くて時間が少ない。まあ、訳詞は 自分が歌うために限らなければ80くらいのばあさんになってからやっても遅くない か・・・ おっと、その時はまた別の事で時間が少ないとぼやいているかも。 さて、おしゃべりが長くなった。また、催促の電話。飲みに行く。

>そのうち、いろいろご意見を取り入れた上で、「よし」となった暁には、
>学生には知らせます。既に「女性と現代」のクラスで、私たちのことは
>話してあって、学生は「シャンソン歌手のお友達」に興味を持っているので。
>9月中旬以降になるでしょう。そしたら「若い未知の読者」から
>別の意見が聞けるかも。

「若い未知の・・・」と言う言葉、ワクワクするね。 数年前にあなたが学生のために(私について)書いた英文のエッセイの中では 私は「シャンソン歌手」ではなかったよね。 今もまだ「歌手」と呼ばれる事にも自分を「歌手」と名乗ることにも 面映い気持ちがある。ただ、「歌いたい人」であることは確か。 一人で歌い始めてからやっと一年。 まあ、歌手だったり、教師であったり、シャチョウであったり、妻であったり 母であったり、ヨッパライであったりする私の全てが私。 Identity にこだわる必要もない。私はわたし。 Call me Yuko!

From Yuko


From Keiko to Yuko 8/31/1999 「Re:ヨコハマの夜」 (Tokyo)

Dear Yuko

帰国したとたんからフル回転ね。メールありがとう。「直接会うに勝るもの無 し」と言っていたあなたが、お誘いに待ったをかけてまでパソコンの前に座って 返信を書いているなんて、おかしいような不思議なような。私としてはそちらの 様子をかいま見ることができてとても楽しいけれど。

> 帰国後一番暑い日だったような気がする、今日は。最後の休日。

そう、いつの間にか夏も終わり。毎年どうして8月31日が来るのか信じられない 気持ちは、子どもの頃から変わらない。夏休みが永遠に続けばよいのにとどんな に願ったことか。けれど分かっているのよね、再びふだんの生活が回転し始めれ ば夏のことはいつしか遠のき、また新しいものに向かって夢中で毎日を過ごすと いうことも。振り返って、昔はこうだったとかああだったとか、「こんなはずで は」というような発想をあなたも私も持つ人間ではない。だからお互い別々の暮 らしの中で、滅多に相手を思い出すこともなく、たまーに「どうしているかな」 と電話するのがせいぜいで、一年に一度会えればめっけもの。それがどうでしょ う、今年の夏と来たら、このパソコンてヤツのおかげで、遠くオックスフォード と東京に離れていたにもかかわらず、メールによって「時を共有」してしまった じゃない。

> この秋の音楽活動のことでしたね。
> 私はいわゆるライブ歌手として、シャンソニエ、ライブハウス出演
> を自分の音楽活動の中心にしていくつもりはあまりないので、
> 数は多くないけど、マイペースでやってくつもり。
> あと、秋にはCD作りもある。
> これには間に合わないかもしれないけど、いつか、あなたの詩を歌っ
>てCD作れるといいね。夢は必ず果たす!

リクエストに応えてこれからの活動の様子を知らせてくれてありがとう。読んで みるとあなたのテリトリーは、やはり横浜から湘南方面なのですね。私にとって はどちらも「圏外」というか、知らない場所だ。あなたの話を読んでいると、私 の全く知らない世界があること、思いもよらぬ発想をする人々がいること、しか もすごい実行力で夢を叶えていく人々だということが伝わってきて、ちょっとク ラクラ目眩がするくらい。ふーむ、お互い別々に歩んだ25年は半端じゃなかっ た。あなたの夢の片隅に、私が書いた詩をいつか歌うこと、というのが入ってい るのは光栄です。「夢は必ず果たす!」という言葉のド迫力に、私は「Yukoなら やるだろう」という確信を持つわ。あなたが自信を持って歌えるような心の言葉 を紡ぎましょう。

> 今もまだ「歌手」と呼ばれる事にも自分を「歌手」と名乗ることにも
> 面映い気持ちがある。ただ、「歌いたい人」であることは確か。
> 一人で歌い始めてからやっと一年。
> まあ、歌手だったり、教師であったり、シャチョウであったり、妻であったり
> 母であったり、ヨッパライであったりする私の全てが私。
> Identity にこだわる必要もない。私はわたし。 Call me Yuko!

All right, Yuko. Now call me Keiko. あなたが私のことをKeikoと呼ぶよう になるまでに25年かかったってことに気付いている?これまで私があなたに抱い てきた唯一の不満は、いつも私のことを名字で呼んでいたこと。意識してすらい なかったでしょう。私は待っていたのよ。どういう訳かあなたは他の友達のこと をニックネームで呼んだり、ファーストネームで呼ぶくせに私のことは旧姓及び 現姓で呼んでいた。心理分析は得意じゃないからいたしませぬが、何かがそうさ せていたのでしょうね。お互い英語を第二言語としながら、彼らの流儀の初歩の 初歩はすっ飛ばしていたなんて、面白い。でも、今回の交信でその壁が破れて、 Yuko and Keikoになったみたいだから、嬉しいわ。言葉というのは不思議なも の。今度会ったとき、果たしてあなたが私をKeikoと照れずに呼べるかどうか、 拝見するのが楽しみよ(笑)。

さて、私の秋も忙しくなりそう。秋は勤務先の学校も多事多端だし、とりわけ女 子短期大学なるものへの逆風が強いご時世なので、「お客様集め」や「サービス 内容の検討」に奔走することとなるでしょう。でもね、私にとって教室に出て いって学生たちを前にして授業することは、ステージフライトにも似た緊張感と 「歌わずにいられない」歌手の本性にも似た、チャレンジ。うまくいく日もあれ ば不満足の極みの日もある。相談に訪れる学生と話し込んだり、授業の準備をし たり、提出物を点検したり、そうそうオンラインで送られてくる英作文をパソコ ンモニターに向かってひたすら添削し続けるという仕事もあったっけ。とても地 味な仕事よ。でも相手はいつも人間。心に響く言葉を語れるかどうか、若い目が いつもこちらを見ています。

あなたと同様、私にもいくつもの顔がある。そのどれもが「仮面」ではなく、そ れぞれの素顔であるように(勿論この年になったら薄化粧は欠かせないけれど !)、自分を失わないでやっていきたいものです。多分大丈夫。私のまわりにも 素敵な人たちがいっぱいいます。素晴らしいものを見つけられるかどうかは、結 局こちらの生き方の問題だわね。多分あなたとの「公開書簡」をひとまず終了し た後も、私はあなたにメールを書き続けるでしょうし、自分のための言葉を書き 続けていくことでしょう。

「歌いたいYuko」と「書きたいKeiko」。会える日を楽しみにしているわ。きっ とあっという間のことよ。目覚まし時計持って行こうか。まあこれからは「続き はメールでね」というのが私たちの合い言葉になるでしょう。こんなに早くあな たが「メールライター」になるとは思わなかった。やっぱり「変身」の続編を書 かなくては。それではまた。

From Keiko


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